海外で見かけるラウンドアバウトが日本にも!?ルールや特徴
日本でのラウンドアバウト概要
日本にも過去から円形交差点、いわゆるロータリーと呼ばれる信号機のない交差点が存在しました。
現在でもわずかに残っていることがあり、そこを走ったことがある方もいるかと思います。
イズムも実は走ったことがあります。
場所的には公道ではなく私道となる霊園内、千葉の某有名巨大霊園内の道路としてロータリー交差点が存在していて、そこを何回も走ったことがありますが、そのロータリー交差点のような形式の新しい交差点が昨今、復活してきたようです。
名称はロータリー交差点ではなく、環状交差点、通称ラウンドアバウトと呼ばれるものです。
これは2013年6月に行われた道路交通法の改正のよって新たに定義づけられたもので、翌年の2014年9月1日から施行されました。
とはいってもなかなか普及せず、2017年現在でも人によっては一度も通ったことがないといったぐらいの数しか設置されていません。
東北地方では岩手県と宮城県に数カ所、関東では埼玉県、千葉県、神奈川県、東京都の多摩地域に数カ所、中部地方では新潟県、山梨県、長野県、静岡県、愛知県に数カ所、関西地方では滋賀県と大阪府に1カ所ずつ、中国地方では岡山県に一か所のみ、四国は今のところなし、九州地方は福岡県に2カ所、沖縄地方ではロータリー交差点を転用した形で一か所だけ作られています。
いずれにしても交通量が少ない地方での採用となっていますが実のところラウンドアバウトは大都市の交差点のような交通量の多い交差点には適用できないことが分かっているので、どうしても地方や地方都市だけということになってしまうようです。
また、都市部に設置出来ていないのにはもう1つ理由があります。
それはラウンドアバウトの走り方がまだ一般化していないということです。
ラウンドアバウト内の走り方は今までの交差点を通過するとの全く逆の行動や意識を持つ場合があります。
そのため、ラウンドアバウトの走り方を知らない方がラウンドアバウトに差し掛かると迷い始めて、途端にスピードが下がってしまったり、止まらなければならないところを止まらなかったり、止まる必要がないところで止まってしまったりと交通の流れを乱してしまうことになるわけです。
一応、ラウンドアバウトの標識やわけのわからない「ゆずれ」などの法定外表示などがされていますが、それでも慣れないラウンドアバウトをスムーズに走ることは難しいわけです。
現状でそのような状態のラウンドアバウトを交通量の多い首都東京の中心部に設置したらそれだけでも交通は麻痺してしまいます。
だからこそ、まずは地方から少しずつ慣れてもらって、いずれは大都市にもといった感じなのでしょう。
そもそもラウンドアバウトとは?
ラウンドアバウトとは日本の法律では、環状交差点と呼ばれているもので、それまであった信号機付き、一時停止付の交差点の代わりとして、円滑な交通を行うためのものとして新たに定義されたものです。
古くからあったロータリー交差点のバージョンアップとして見ればいいでしょう。
それまでの交差点は、信号や一時停止などによって自動車が止まるタイミングがあり、それによってスムーズな走りができず渋滞を引き起こしていたという点と対面通行となるためにどうしても交通事故が起きやすいというデメリットを持っていました。
これらのデメリットを何とか解消しようとして作られたのがラウンドアバウトで、基本的には信号もなく、一時停止もなく、対面通行もないといったものを作ったわけです。
形状としては中央に島を置いた今までのロータリー交差点と同じもので、そこに四方八方から複数の道路がつながっています。
中央の島のまわりにある円形の道路を環状道路といって、ラウンドアバウトではその道路が最優先となります。
走る方向は日本では時計回りで、その交差点を直進する車も左折する車も右折する車も必ず一度は左折する形となります。
一度、環状道路に入ってから、自分が行きたい方向に伸びている道路に分岐することで交差点を通過するということになるわけですが、実際にはそこまでスムーズな流れになることはないようです。
たとえば、交差点をまっすぐ通過するときのことを考えてみてください。
それまででしたら信号が青であることを確認して、法定速度以内でのスピードで走り抜けることができたわけですが、ラウンドアバウトでは環状道路を走っている車が最優先となりますので、少なくても徐行、ほとんどの場合は一時停止状態となるでしょう。
直進通過であれば60km/hで走り抜けることができたところ、ラウンドアバウトでは徐行や一時停止をしてまた加速するといった形をとるため、絶対的なスピードは低くなり、そればかりか加速するために余計な燃料消費や加速音による騒音が大きくなります。
これは左折時も同じで、それまでなら信号が青であり、歩行者がいなければそのままスムーズに左折できたものの環状道路に入るために徐行や一時停止をしなければなりません。
逆にメリットになるのは右折時、右折時は都心部などの交通量が多いところでは必ずといっていいほど対向車をやり過ごすために一度止まることになりますが、ラウンドアバウトでもそれは同じ、環状道路に入る時に一度止まるか徐行することになるでしょう。
しかし、環状道路に入ってしまえば、こちら側が最優先になりますので、対向車の有無を確認することなく、中央の島に沿って曲がっていけばいいだけですので、この部分だけはスムーズになるかと思います。
ただ、直進にしても左折にしても右折にしても絶対的なスピードが低くなることになりますので、高速道路の料金所渋滞のように、交通量によっては大渋滞を引き起こす可能性が高く、そうでなくても車の量が多い日本では渋滞が多いのに更に渋滞ポイントを増やしてしまうことになりかねません。
それからラウンドアバウトを作るなると、それまでの単なる十字路よりも余計な土地を必要とします。
特に中央の島、ここは視界を確保するために何も置くことができないので、それこそ無駄な土地となります。
環状道路の部分も丸く作る関係上、より多くの土地を必要とするため、それが地価の高騰などに関わってこなければいいかと今から心配です。
そして最後に歩行者の問題、ラウンドアバウトでは基本的に信号の設置、一時停止の設置はしません。
ということは、歩行者が渡る横断歩道を設置することが難しくなります。
設置することはできますが、歩行者の安全性を確保するには信号や一時停止がないということはかなり無理があるでしょう。
しかし、実際には信号はなくても一時停止が設置されていることがほとんどで、たとえば2017年現在で東京で唯一ラウンドアバウトが設置されている多摩市の桜が丘のものを見てみると環状道路に5本の道路が集結しており、そのすべての道路に一時停止が設置され、その内4本の道路に横断歩道が設置されています。
円滑な交通を実現するために作ったラウンドアバウト、結局は一時停止などが設置されて円滑どころか不自由さを感じてしまう道路になってしまうのが関の山なのです。
ラウンドアバウトの基本的なルール
ラウンドアバウトは基本的に交差点ではなく、メインとなる道路とそこから分かれる路地というように考えるとわかりやすいでしょう。
メインとなる道路が環状道路、ぐるぐる回る環状道路です。
これが最優先道路となりますので、これからラウンドアバウトに侵入しようとする場合は、路地から幹線道路に出る時に幹線道路の交通を妨げてはいけない、路地から出る車の方が待たなければならないのと同じように、環状道路を走る車が優先で、流入しようとする方が待つ必要があります。
極端な言い方をすれば、環状道路に車がぐるぐる回っていたとしたら流入していはいけないということになります。
まずこれが大前提です。
次に進み方ですが、直進、右折、左折、Uターンで分けてみます。
直進の場合
直進の場合は環状道路手前でウィンカーを点滅させません。
感覚的には環状道路に左折してはいるような形になるため、どうしてもウィンカーをつけがちですが、直進することをここで意思表示する形になります。
この状態で環状道路に空きができるのを待ちます。
環状道路が空いたら流入しますが、その時に環状道路の出来るだけ左側を走らなければなりません。
ここが大事なところなのですが、直進だからといってそのまま、直進方向にある道路に出てはいけません。
事実上、直進するといっても環状道路からすると左に曲がって、流出するわけですからその道の手前に来たら左のウィンカーを出して環状道路を離れていきます。
右折の場合
右折の場合は環状道路に入る前に右ウィンカーを点滅させます。
右折するから右ウィンカーというのは納得できますが、左に曲がる形で環状道路に入っていくのに、その正反対のウィンカーをつけなければならないというのはちょっと抵抗があるかもしれません。
そして環状道路に空きができたら、右ウィンカーを付けたまま流入し、その途中でウィンカーを戻します。
一度ウィンカーを消す形になりますが、右折する形になる流出口の手前で今度は左側のウィンカーを出して、環状道路から流出していきます。
左折の場合
左折は環状道路に入る手前で左のウィンカーを点滅させます。
環状道路に流入したら右折の時と同じように1度ウィンカーを消して、左折する流出口の手前で再度、左のウィンカーを点滅させます。
90度左に曲がる場合は最初につけた時のままでいいかもしれませんが、少し距離がある場合はウィンカーを一度消して、またつけるといった形を取った方がいいかもしれません。
Uターンの場合
普通の交差点では道幅の関係上、なかなかしにくかった交差点を利用したUターンもラウンドアバウトでは容易にできるようになります。
方法としては、右折時の延長線上にあるものと思えばいいでしょう。
環状道路手前で右のウィンカーを点滅させます。
環状道路に入ったら1度ウィンカー止めて、ぐるっと180度方向転換をします。
そして今走ってきた道が見えたら、左のウィンカーを点滅させ、環状道路から離脱していきます。
こうしてみるとウィンカーをだすタイミングは2回です。
最初は環状道路に流入する時、この先はどちらの方向に向かうのかということを意思表示します。
当然ながら直進方向はウィンカーを出しません。
そして環状道路の入った後にどの流出口から出るのかということを左ウィンカーで表すといった具合です。
言葉で書くとちょっと複雑になりますが、実際に走ると以外と簡単な操作ばかりですので、あまり難しくはありません。
ラウンドアバウト内でしてはいけないこと
ラウンドアバウトは基本は時計回りです。
特に右折方向に進みたい場合は無駄にぐるっと回らなければならないわけですが、一般の交差点と同じような感覚で入ろうとするとついつい環状道路を右に曲がりがちです。
環状道路は完全に一方通行ですので、間違って右に曲がってしまうと正面衝突を起こします。
それから環状道路は優先道路です。
環状道路に入る時は、環状道路上を走る車の通行を妨げてはいけません。
それと歩行者の安全面、環状道路に入る時はそれなりに気にしていても、環状道路から左に曲がる形で出る時に横断歩道上の歩行者などを見落とす可能性がありますので、常に左の歩道上にいる歩行者や自転車などの状況を判断しておかなければなりません。
自動車だけが通るのであれば、車幅もあって2列、3列といった形で環状道路を走ることはないですが、二輪車が加わるとそういった形になる可能性がありますので、特に左ドアミラーから見える状況には注意していただきたいと思います。
これらは単純なことですが、一度間違えると大事故を引き起こすことになるので注意が必要です。
ラウンドアバウトのメリットとデメリット
ラウンドアバウトを導入することになったわけですから何らのメリットがあるわけです。
理論的には信号や一時停止がなく、スムーズな通行ができる、事実上一方通行になるわけですから交通事故が減ると言われています。
それから環境論者に言わせれば、電気を使う信号機を設置する必要がないので、地球環境にいい、景観を損なわないで済む、中央にある島を緑地にすることができるので、環境にやさしいなどといったさもありげなことを言いますが、どれも話半分といっていいでしょう。
そのようなことどうにでも言える事であって、たとえばスムーズな通行ができるかといったら何度となくある一時停止、徐行状態をとるため、むしろ車の量が一定数を超えると渋滞の原因になりますし、一方通行であることで事故が減るという点も事故を起こす可能性が高い「カーブを曲がる」という行為をおのずとしなければならない、それも峠道レベルのRに小さなコーナーを曲がるのと同じぐらいのことになるので、事故が減るとは言い切れません。
環境問題に関しては確実にゴーストップが増えるのでそれだけ排気ガスの排出量も増えますし燃料消費も増える、加速時の大きな音もするようになる、自動車のアイドリングストップ機構が作動しないのでそこでも燃料消費が増えます。
それから信号機の設置がないので電気使用量が減るという点も信号機の代わりに電気式の一時停止やラウンドアバウト標識を点灯させなければならないので、全くのゼロにはならないのです。
中央の島に緑地ができるといっても環境にほぼ影響など与えないでしょう、むしろ無駄な土地です。
無駄な土地といえば一般の交差点より敷地面積が必要なので、私有地が少なくなる可能性があります。
こうしてみるとラウンドアバウトはほとんどメリットなど無いとも言えるのではないでしょうか。
ロータリー交差点とラウンドアバウトの違い
ラウンドアバウトと同じ形状の交差点として昔からロータリー交差点というものがありました。
ドーナツ状の環状道路に四方から集まる道路、環状道路は一方通行という点はロータリー交差点もラウンドアバウトも全く同じです。
では何が違うのかというと、それは道路の優先順位です。
ラウンドアバウトは、環状道路を走る車が優先で、環状道路をメインの道路として見ます。
そのため環状道路に接する道路から車が来てもそのまま環状道路をぐるっと走ることができます。
一方、ロータリー交差点は、環状道路をメインとしないため、日本の道路交通の基本となる「左方優先」という概念が働き、例え環状道路を走っていても、接する道路から車が来たら、そちらの車を優先しなければならないのです。
例えば、右折しようとした時に左側の道路からと、正面の道路から車が来ていたらそれらすべてを優先にしなければならないので、最低でも2回は環状道路上で止まらなければなりません。
これでは円滑な交通を実現することができないので、ラウンドアバウトというものが作られたのです。
視覚障害者から見たラウンドアバウトと今後の課題
ラウンドアバウトを採用するうえで、かなりのウェイトで問題となるのが視覚障害者の方です。
視覚障害者の方は当然ですが我々健常者のように目による確認作業ができません。
その時点でも普通の交差点で混乱を招くことがあるのですが、円形の道路が目の前にあるということでより一層混乱をきたすことが分かっています。
たとえば、普通の十字路をラウンドアバウト形状にしたところがあるとします。
視覚障害者の方はそれまでの十字路型交差点であれば、歩道の点字ブロックやガードレールなどを伝ってまっすぐ歩き、点字ブロックや音などを頼りに交差した道路の横断歩道を渡るだけで、直進方向に歩くことができました。
しかし、ラウンドアバウトとなるとまっすぐ交差するのではなく、途中に円形道路があり、その円形道路に沿って歩かなければ、横断歩道に達することができないわけです。
イズムのように視覚がある人間であればそのようなことは当たり前のようにできますが、視覚障害者の方はまっすぐ歩くことが仮にできたとしても点字ブロックがあってもそれに沿って歩くことが難しいのです。
中にはそれだけで方向感覚を失ってしまうことにもなります。
それから四方から道路が集まるようなラウンドアバウトであれば、まだましなのですが、5方向や6方向と集まる道路の数が多くなると、どの道路沿いに歩けば、直進方向に進むことができるのかというのがわからなくなってしまうというものもあります。
目が見えていれば、横断歩道を何個渡れば直進方向に進めるということがわかりますが、角度を理解することが難しい視覚障害者の場合はそれがわかりません。
現在でもそれがわからずに迷子になってしまう視覚障害者の方が後を絶たないようです。
すべての国民が安全に安心して歩ける道路づくりが望ましいのに、それができないラウンドアバウトは果たして優れた交通をもたらすことができるのでしょうか?
みんなで考えて行く必要があるのは誰が見ても明白ですね。
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